「髪は女の命」と言われていた世代の女性にとって、「かつら」は薄毛や白髪といった髪の悩みの最終駅のようなもので、寂しいイメージもありました。
ところが最近では、さまざまな女性用ウィッグが登場し、ファッションの一部としてウィッグを楽しむ女性も増えています。今回は女性用ウィッグのいろいろな種類とお手入れの方法などを、詳しくご紹介します。
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女性用ウィッグの用途別分類
女性がウィッグをつけるシーンは多様化しています。年代別にも違いがありますが、用途別に5つの種類に分けられます。
- トップピース: 頭頂部に使われます。トップのボリュームアップで、つむじの薄毛が気になる悩みを解消します。
- ハーフウィッグ:頭頂部から耳の上までをカバーするウィッグです。白髪が増えた場合などに自髪とミックスさせて白髪を目立たなくしたりする場合もあります。程よいボリュームアップと、トップのスタイリングが決まらない人の悩みにも使われます。
- フルウィッグ:頭全体に被るタイプです。全体的な髪の量の不足が気になる場合の他、ファッションウィッグとしてイメージを変えたい場合にも用いられます。
- リフトアップウィッグ:フルウィッグと同じく頭全体に被るタイプですが、専用のネットを使うことで、リフトアップと小顔効果が期待できます。
- 医療用ウィッグ:病気治療薬の副作用で脱毛してしまった人のためのウィッグです。ファッションウィッグと装着の仕方などが違います。医療用といっても、残念ながら保険適応にはならないようです。
オーダー方法は3通り
ウィッグも洋服のように完成した物を選んで購入する既成品タイプと、オーダーする人それぞれに合わせて一から作るオーダーメイドがあります。イージーオーダーメイドは、既成品を加工してフィット感や見栄えをオーダーメイドに近づけたもので、オーダーメイドよりも手軽にあつらえることが可能です。
- 既成品:主にファッションのひとつとして帽子のように付け替えるイメージの、ファッションウィッグに多いタイプです。通販などで購入する製品は大半が既成品のウィッグです。最近は、商品のラインナップも豊富で、気になるウィッグを自宅に取り寄せて無料で試着できたり、イメージと違う場合は返品も可能といった通販ショップも増えています。TPOに合わせて洋服と同じような感覚でウィッグを選ぶ人が世代にかかわらず増えているようです。
- オーダーメイド:お店に注文してから、オーダー主の希望を聞きながら細かく調整してその人専用のウィッグをつくります。主に老舗のウィッグ専門店などが手がけています。繊細な職人技で丁寧に作られますので、価格は高めの傾向です。
- イージーオーダーメイド:あらかじめいくつかのタイプのウィッグが用意されていて、それを購入者の希望に合わせて加工するタイプです。大手専門メーカーが全国の店舗で手がけているレディメイドのウィッグがこれに当たります。実際に店舗で装着してみて、好みのウィッグを更に自分に似合うように調整できる他、白髪や薄毛の悩みも専門スタッフに気軽に相談できるので、ウィッグがはじめての人にはおすすめです。
女性用ウィッグに用いられる素材
女性用ウィッグは、大きく毛の部分とウィッグの頭皮に当たる「ベース」の部分に分けられます。それぞれに用いられている素材を解説します。
毛の素材は人毛、もしくは人工毛
ウィッグの毛には、人毛、人工毛、両者のミックス素材が用いられています。
- 人毛:歴史的にも一般的に「かつら」といえば、人毛素材が一般的でした。「髪を売る」という商取引も行われていて、高価な値段で取引されていたようです。ウィッグ用の人毛には「太い直毛」が適していて、現在では、東南アジア諸国の女性・インド人女性・イタリア人女性の髪質が大変良いと言われています。自然で地毛に馴染みやすい一方で、価格が高く、お手入れに手間がかかる傾向があります。
- 人工毛:人工毛の素材は化学繊維(ファイバー)が使われています。ほとんどがポリエステル繊維です。ポリエステル繊維には形状記憶という特質があり、これが人工毛の扱いやすさの秘密です。比較的安価ですが、テカリや静電気が起こりやすいというデメリットもあります。コスプレ用や若い人のファッションウィッグに人工毛素材のウィッグが使われることが多いようです。
- 人毛と人工毛のミックス素材:最近の女性用ウィッグで人気なのはほとんどがこのタイプです。ミックスの割合は好みによって変えることも可能です。それによって雰囲気や扱いやすさ、価格も違ってきます。
ベースの素材はネット、もしくは人工皮膚
ベースの素材にも種類があります。一般的には、ネットベース主体に、はえぎわやつむじの部分を人工皮膚(スキン)ベースにしているウィッグが多いようです。
- ネットベース:その名の通り、ネット状に織られた素材でできているため、通気性や耐久性が高く、軽いことが特徴です。
- スキンベース:ゴム状の人工皮膚でできているため、通気性は劣るものの、薄く自然な仕上がりになります。
ウィッグのお手入れの時に気をつけたいこと
どのタイプのウィッグでも、日頃のお手入れは欠かせません。素材にかかわらず、全体的に注意しておきたいことをまず紹介します。
シャンプーやリンスは専用品を
ウィッグを購入したメーカーに専用のシャンプーやリンスがあるなら、専用の製品を使ったほうがいいでしょう。専用の製品がなかったり、高価な場合は自髪を洗う時のシャンプー&リンスでも構いません。シャンプーの量は洗面器いっぱいの水に大さじ1杯くらいが目安です。
洗う頻度は1週間から10日に一度
毎日着用している場合でも、洗う頻度は1週間から10日に一度で構いません。毎日洗うと逆に傷みやすくなってしまいます。
ただしウィッグの下に「ウィッグ用アンダーキャップ(インナーキャップ)」を使用している場合は、アンダーキャップをこまめにお洗濯しましょう。アンダーキャップを着用して清潔に保つことで、ウィッグ本体の汚れも防げます。
ブラシは毛先から少しずつとかす
ウィッグを洗う前に、髪の毛をブラッシングをしてもつれを直し、ホコリを取りましょう。この時気をつけたいのは、ブラッシングの方向です。
自髪の場合は頭頂から毛先に向かってとかすのがふつうですが、ウィッグの場合は毛先から少しずつもつれをとるようにしてとかしましょう。また、力を入れすぎるとベースから髪の毛が簡単に抜けてしまうため、注意が必要です。
ストッパーは必ず閉じておく
ウィッグを自髪に取り付けるためのストッパーは閉じておきましょう。お手入れの際に手を傷つけてしまう恐れがあります。
ウィッグの素材別のお手入れ方法
ここからは、ウィッグの毛の素材別にお手入れ方法をご紹介します。毛の素材によって洗い方や乾かし方、スタイリングの仕方は違います。特徴を知ってしっかりお手入れしたいですね。
人毛ウィッグはブラシでとかしながら洗う
人毛の性質はスタイリングが難しいこと。間違ったお手入れをすると、すぐにスタイルが崩れてしまいます。ただし、熱に強いので、お湯やドライヤーが使えます。洗うときには以下の手順で行いましょう。
- 洗面器に水またはぬるま湯(30〜40℃)を入れ、シャンプーを溶かします。
- 水を泡立ててウィッグの額に当たる部分を手で持ちながら髪の毛を毛先からブラシでとかしながら洗います。
- 流水で毛先からとかしながらすすぎます。
- リンスかトリートメントを溶かした水にウィッグを2〜3回くぐらせます。
- 流水で毛先からとかしながらリンスをすすぎます。
- 乾いたタオルの上に広げて押さえるように水気を取ります。人工肌付きの場合は特に水分をよく拭き取りましょう。
- 半乾きでスタイリングして自然乾燥させるか、ドライヤーやカーラーを使って乾かしましょう。
人毛の場合はシャワーなどの流水で洗うのがポイントです。いずれの手順においても、髪の毛がからまるのを防ぐために洗面器にウィッグを漬け込むのはやめましょう。
人工毛素材のウィッグはドライヤーNG
人工毛の素材はポリエステル繊維です。熱に弱いので、お湯で洗ったり、直射日光に当てて乾かしたり、ドライヤーを使ってスタイリングすることは厳禁です。
そのかわり、形状記憶の性質があるので自然乾燥でももともとのスタイルは崩れません。以下の手順でお手入れを行いましょう。
- 洗面器に水を入れ、シャンプーを溶かします。
- 泡立ててからウィッグを漬けて軽く押し洗いします。人工毛はからみやすいので、ブラシを使ったとかし洗いや揉み洗いは避けましょう。
- すすぎも水を替えながら押し洗いします。泡がすっかり取れるまで十分にすすぎましょう。
- リンスやトリートメントを溶かし、数分漬け込んでから軽くすすぎます。
- 乾いたタオルの上に広げ、押さえながら水気を十分取ります。
- 室内で自然乾燥させます。
- スタイリングは乾いてから。乾いていない時にブラッシングをするとカールが取れてしまいます。毛先から毛の流れを整えましょう。
ワックスなどで毛髪部分の汚れがひどい場合は、手順2で洗濯ネットに入れて衣類洗濯用の洗剤(おしゃれ着用など)に数分漬けたうえで押し洗いすることも可能です。
人毛と人工毛のミックス素材もドライヤーは避けよう
人毛と人工毛のミックス素材は人工毛の形状記憶を生かしてスタイリングの手間が省けるのが魅力です。そのかわり人工毛と同様熱に弱いので、天日干しをしたり、ドライヤーでスタイリングをすることは避けましょう。
人毛の割合が多い製品の場合はお湯洗いやドライヤーが可能な場合もありますが、メーカーの使用上の説明書に従ってお手入れしてください。
- 洗面器に水を入れ、シャンプーを溶かします。
- 泡立ててからウィッグを毛先から指先でほぐしながら洗います。ミックス素材も毛髪がからみやすいので、漬け置きや、揉み洗いは避けましょう。
- リンスやトリートメントを溶かし、数分漬け込んでから軽くすすぎます。
- 乾いたタオルの上に広げ、押さえながら水気を十分取ります。
- ウィッグをよく振るとカールが戻ってきます。
- 半乾きの状態でスタイリングします。
- 室内で自然乾燥させます。
人毛と人工毛のミックス素材は両者の特性を併せ持っているので、お手入れが若干難しいですね。以下にそれぞれの素材別の扱いのポイントをまとめてみました。
素材別シャンプー方法の早わかり
揉み洗いはすべての場合でNGであることに注意しましょう。
お湯洗い | とかし洗い※ | 漬け込み | 揉み洗い | |
---|---|---|---|---|
人毛 | ○ | ○ | ☓ | ☓ |
人工毛 | ☓ | ☓ | ○ | ☓ |
ミックス | ☓ | ☓ | ☓ | ☓ |
※ブラシでとかしながら洗う方法
素材別スタイリング方法の早わかり
人毛素材も直射日光で乾かすのはおすすめしません。人毛素材のスタイリングでは、ドライヤーやカーラーでスタイリングすることが可能です。ミックス素材の場合、半乾きの状態でウィッグをよく振るのがポイントです。
ドライヤーやカーラーを使わなくてもカールが戻ってきて、そのまま自然乾燥させるだけでOKなのは便利ですね。
天日干し | ドライヤー | スタイリングのタイミング | |
---|---|---|---|
人毛 | △ | ○ | 半乾きで。その後自然乾燥 |
人工毛 | ☓ | ☓ | 乾いてから |
ミックス | ☓ | ☓ | 半乾きで。その後自然乾燥 |
正しいお手入れをしてウィッグを楽しもう
平均寿命が伸び、いつまでも気持ちも身体も若々しい女性が増えています。人生100年時代と言われる今日、女性用ウィッグは女性が生活を楽しむための選択肢としてますます活躍しそうな予感がしますね。
女性用ウィッグは、素材によってお手入れやスタイリングにちょっとしたコツが必要です。それでも、薄毛や白髪などの髪の悩みを簡単に解決できるばかりでなく、ファッションの一部として楽しめることが大きな魅力。ぜひ本記事を参考に、ウィッグのある生活を楽しんでくださいね。
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